七面鳥のある食卓

2015年12月

 

 

 日本で秋といえば、読書の秋、スポーツの秋、そしてボナ・ペティの皆様ならもちろん食欲の秋!そして以前お伝えしたとおり、そこにハロウィンも市民権を得つつあります。ハロウィンの後は何かな、と思えばもうすでにクリスマスムード。あちらこちらで夜にはイルミネーションがきらめき、早いところではすでにクリスマスソングが聞こえてくるお店もあります。 

 アメリカではハロウィンとクリスマスの間にサンクスギビングがあり、それが終わって12月になろうとする頃にクリスマスムードが始まるので日本は格別に早く感じます。

 

クリスマスのショーで有名なラジオ・シティ・ホールのイルミネーション
クリスマスのショーで有名なラジオ・シティ・ホールのイルミネーション
表参道ヒルズのツリー
表参道ヒルズのツリー

 サンクスギビングもクリスマスも多くのアメリカ人にとっては日本人にとってのお盆のようなもので、里帰りしたり親戚宅に集まります。遠くて中々里帰りできない場合でも、サンクスギビングは友人と過ごし、年に一度クリスマスだけは帰る努力を惜しまないようです。 

 ニューヨークでクリスマスを過ごすと、近所のスーパーにいっても顔見知りに会うこともなく閑散としているのに街中は観光客でものすごい人出だったりして、かえってしんみりしたものです。

  アメリカ人はクリスマスに何を食べるのか、というのは「アメリカ人とはどんな人をさすのか」によって答えも違ってくるのですが、一般的には七面鳥です。サンクスギビングも七面鳥。ほんの一カ月の間にチキンの倍近い大きさのトリを何時間もかけてオーブンで焼くような面倒くさいことを2度もするのか?昔ながらのおうちではすることもありますが、最近はサンクスギビングは七面鳥。クリスマスはハムの塊やローストビーフなどと、違うメニューにするご家庭も多いようです。


スーパーのターキー
スーパーのターキー

 昔々、南部のご家庭でお世話になった時には11月も12月もしっかり七面鳥を頂きました。しかも、1日で食べ終わるものではないので、何日か食べ続けたものです。スタッフィングと呼ばれる七面鳥の詰め物は家庭によって好みがあり、私が頂いたものは南部でよく食べられるコーンブレッドを崩してソーセージなどと混ぜたもの。付け合わせはグレービーソースをかけたマッシュポテト、南部ではマカロニパイと呼ばれるマカロニチーズ、そして南部では定番のカラードグリーンという苦味のある菜っ葉。デザートはパンプキンパイやピーカンパイにレッド・ベルベット・ケーキ。確かサンクスギビングもクリスマスもほぼ同じメニューでした。 

 

七面鳥を買ったら入れてくれる大きなお世話な袋(「今、七面鳥買いました!」って書いてある)
七面鳥を買ったら入れてくれる大きなお世話な袋(「今、七面鳥買いました!」って書いてある)

 ニューヨークでサンクスギビングを目前にしたころのことでした。学校でサンクスギビングというのは感謝祭のことで・・・と慣習についておそわってきた我が子が「ターキー(七面鳥)を食べるんだよね!」と目を輝かせていうので母もその気になり、気合を入れてスーパーへ。ところが・・・気合を入れるのが遅かった。サンクスギビングという年中行事は事前に重さ指定で七面鳥をスーパーに予約し、当日、受け取るものだったのです。売り場にあるのは売れ残った、やたら大きいトリばかり。一生懸命七面鳥をひっくり返して一番小さいトリをさがしながらふと気がつくと、向こう側にも私と同じことをしている必死の形相の男性が。彼に取られたらもう8人ぐらいで食べるような七面鳥を買わなければならなくなってしまう!となんとか妥協できるトリを探し出し、ロースト用の温度計と定番のクランベリーソースを作るためのクランベリーやコーンブレッド・ミックスを買い、重いトリを持って帰りました。脂肪分が少ないためにトリの胸肉よりぱさぱさになりがちな七面鳥がふっくらおいしく焼けたのはビギナーズラックでしょう。さすがに1ヶ月後のクリスマスに同じことをしようとはとても思えませんでした。七面鳥を焼く人はきっと年に一度、皆が集まる顔を思い浮かべるからがんばれるのでしょう。