2013年7月
ノルウェーと聞き、私がとっさに思いつくのが「フィヨルド」「バイキング」そして「男女平等」だ。切り立った断崖がそびえる湾や入り江の素晴らしさは写真を見ても感動ものである。地図を見ると、ノルウェーの西側はほとんどこのギザギザのフィヨルドなので、夏は素晴らしいが、冬はかなり寒そう。なんといっても北極に近いのだから。寒い国から来た、笑顔が爽やかな若い大使にお話しを伺いました。
ニルス・エンゲルション氏
お母様がフランス人というエンゲルション氏の風貌や物腰は、ノルウェー人というよりは、むしろヨーロッパ人という印象だ。名前がドイツ的なのは、判事や富裕な階層の家系の先祖が18世紀頃にドイツ風に変えたから。当時はドイツからの移民も多く、上流社会がドイツ風潮だったらしい。だからこの名を名乗っているのは、ノルウェー広しといえど当家系のみだ。
17歳のとき既に外交官の道を選択したニルス君。大学では政治学を専攻。国際情勢、ヨーロッパ経済などを学び、役人としてキャリアをスタートさせた。現職はノルウェー大使とEUにおけるノルウェー政府副代表の二足のわらじをはいている。
―ノルウェー人を一言でいえば
仕事の内容も上下関係も、家庭内でも男女平等の姿勢が貫かれていることでしょうか。妻はノルウェーで仕事をしていましたが、私の転勤に伴い家族で赴任しました。しかしこちらでも政府の仕事に就いています。政府関係のミーティングでは顔を合わせることも多々あります(笑)。しかし私の任期が終われば、彼女のために本国に帰ります。今回は私についてきたので、次は彼女の番です。男性の育児有給休暇が14週間に延び、女性の育児休暇は100%の給料保証が49週間です。
―ノルウェー人の夢は
ノルウェー人は「孤独」になれる機会を探しています。「孤立」と言い換えてもよいでしょう。仕事や文化面の都合で、都会で生活していますが、夢は山(また海辺)に山小屋を持ち、他人と没交渉に時を過ごすことです。
大使の夏の家や冬ごもりの家の写真を見せてもらった。夏は向かい側にデンマークが見える海岸沿岸の家。見渡す限り周りには誰もいない。まるで孤島だ。そこにポツンと家が建っている。冬は隣人が2キロ以内にはいないという山の中。冬の写真を見ると、お祖父さんの代に建てたという小屋が何軒か立っているが、驚くことに、真ん中がサロンと台所の小屋で、メイン寝室は別の小屋。子供の寝室はまた別の小屋といった具合に、ここでも完全に孤独を満喫する。大雪の中でも歩いて食堂に行くという。ウ~寒む。
ノルウェーは日本の面積より少し大きいぐらいの国で、日本と同じ様に山脈と森、湖が多く、住めるところは3%ぐらいだ。人口約5百万人で、人口密度がなんとたったの16人/k㎡。それなのにまだ孤独を求めるのかと、不思議な感じがしたのは日本人だからか。ちなにみ、日本は343人/k㎡。ノルウェーから見れば日本は異常ということになる。
奇跡の魚と呼ばれる回遊魚スクレイ
タラの仲間のスクレイ(Skrei of Norway)は、1月から3月にかけて大群をなしてバレンツ海から、生まれ故郷のノルウェーのフィヨルドに産卵のために戻ってくる。毎年同じ時期に同じ回路で戻る習性はバイキング時代から変わらない。
フィヨルドを南下する途中で、オキアミや小魚を食べ、しっかりと身が締まった雪の様に白い身の魚に育つ。春先になるとレストラン*のメニューに出るので、養殖ものと完全に違うプリッとした身を是非賞味して欲しいものだ。
*時期になると、グルメ情報誌や大使館のHPに店のリストが載っている。