ベルギー人 in NY

 2014年12月


不安だらけの初めての海外生活。ましてや学齢期の子ども連れであれば、子どもは学校になじめるかしら、勉強についていけるかしら、英語は・・・と親は不安の種にことかきません。そしてそんな不安をもってニューヨークにやってくるのは、実は日本人だけではないのです。

 

わが子の通う公立小学校に、アントワープからやってきたベルギー人のこどもがいました。お父さんもお母さんもフラマン語系のベルギー人で、フラマン語で育ってきたその子にとっては、英語は全くの外国語。最初の数カ月は毎日泣いて登校し、お父さんやお母さんが用事で学校に来ようものなら、手を離さずにますます泣いていたものです。それでも低学年の子どもにとっての学校はまだまだお勉強より遊びの要素も多いので次第に慣れていき、一年もたてばすっかり学校になじみ、英語も達者になっていたものです。

 

しかし、大人のお母さんはそう簡単にはいきません。彼女は来米当初、ややフラマンなまりで少しフランス語も混じる英語で、「英語の勉強しなきゃ、と英会話に毎週通い始めたの。」と私に話し、一生懸命ニューヨークになじむ努力をしていました。日本人の私から見れば「英語を習う必要はないんじゃないの?」というぐらいよくしゃべり、クラスのお母さんたちと問題なく意思疎通しているように見えたにもかかわらず、です。

一日中、外国語である英語の環境で過ごさなければならない子どもも大変ですが、日常の学校からのお知らせ、子どもが病気などの緊急連絡、お母さん同士で子どもたちを遊ばせる約束に至るまでほとんどが電話やメールでのやりとりなので、英語が母国語ではないお母さんたちも苦労の連続です。日本でもそうですが、学校や習い事のママ友からの口コミ情報もふだんの英語でのおしゃべりの中でやりとりされることが多いので、積極的に井戸端会議に入っていくことも大事です。駐在で来ているお父さんは仕事で忙しいことが多いので、「こみいった話は語学の達者なパパに」・・・と最初は思っていても、中々お母さんの思い通りにいかないのはご家族で海外赴任された方なら多くの方が経験されていることでしょう。ベルギー人のお母さんも「英語のメールはやっぱり母国語じゃないから難しいわ」なんて言いながら学校との連絡をこなしていました。


”Le Pain Quotidien”なんて発音はできないのかまどろっこしいのか「ル・パン」と呼ばれています。
”Le Pain Quotidien”なんて発音はできないのかまどろっこしいのか「ル・パン」と呼ばれています。
ロウワー・イースト・サイドにあるベルギー風のFritesの店。
ロウワー・イースト・サイドにあるベルギー風のFritesの店。
食べてみれば懐かしい味・・・ソースの種類も豊富だけど、やっぱりマヨかな。
食べてみれば懐かしい味・・・ソースの種類も豊富だけど、やっぱりマヨかな。

そしてこどもの英語力がついてきたら、今度は母国語の維持が気になるところ。ニューヨークにいるベルギー人、ましてフラマン地方出身者の数はそう多くはないので、たいていのこどもたちはマンハッタンにいくつかあるオランダ系のダッチスクールに通うそうです。彼女に言わせると、「オランダのオランダ語とフラマンの言葉は違うけれど、仕方がない」そうです。その点、ニューヨークの日本人コミュニティはずっと大きく、マンハッタンには日本語の補習校が複数あり、郊外に住めば日本の塾や日本語で通える習い事まであります。日本人と知り合うことも難しくないので、日本語で気兼ねなく話したり子ども同士遊ばせたりして息抜きもできます。

 

同時期に当地にやってきた外国人同士、悩みをわかち合えることもあるけれど、ベルギー人から見れば、日本人は同胞も日本食も多くて暮らしやすそうに見えていたようです。そんな彼女が来たばかりのころに言っていたことが、とても印象に残っています。

「ニューヨークに来て、ベルギーの暮らしがどんなに恵まれていたか初めて知ったわ。」

当地では一般に、自分で素材を買ってきて料理するよりもハンバーガーやピザなど調理済みのものを買ってくるほうが安上がりで、新鮮で品質の良い果物や野菜を買おうとするとそのほうが高くつくことが多いのです。そこで初めてベルギーの庶民生活の豊かさに気付かされたというわけです。ベルギーにお住まいの皆さん、新鮮な旬の食材をたっぷりエンジョイしてくださいね。皆様どうぞよいお年をお迎えくださいませ!