タイ王国の古典仮面舞踏劇 The
Khon
2014年7月
5月、ブリュセルのボザールで行われたコーン(仮面舞踊劇)に行ってきました。タイは行ったことがなく、ましてや仮面舞踊劇なんて初めて。仮面と聞いて、ベニスのカーニバルを思い出したぐらい何の知識もなく、あまり期待もせず行ったところ、最初から最後まで息をもつかせないほどの圧倒的なパーフォーマンス。ただただ見とれた夕べでした。
このライブ・パーフォーマンスは、タイ王国の文化省が、伝統的文化の保持と宣伝のため、総勢約50人の舞踊団をベルギーとオランダに派遣したものです。コーン(Khon)とは、王室の重要な催しのある時に演じられる仮面劇で、題目の「ラーマキエンRamakien 」は、ラーマ王子と美しい妻のシーター妃の物語です。これはインドの抒情詩「ラーマーヤナ」を元に、登場人物やストーリーをタイ風にアレンジしたものと解説にありました。
コーン仮面劇はタイ独特の舞台芸術で、民族楽器団の演奏にあわせ「踊り」と「無言劇」で表現されます。足踏みを中心とした手足の動きで、演じる役の感情を表すのが特徴です。 ほとんど男性だけで演じられ、主人公、女主人公、悪鬼、 猿の役があり、神々や天女は先の尖った頭冠を着用、鬼と猿は頭から仮面をかぶり演じます。
開演30分前になり、舞台右端に並ぶ民族楽器団が優しいメロディーを奏でだすと、会場はとたんに異国情緒に満ちあふれ、いやが上にも期待が高まります。
音楽と共に登場した人物の衣装や冠、デフォルメされた仮面の豪華さはどうでしょう。金糸や銀糸で縁どりされた赤、緑、金などの絢爛な衣装をまとい、見得を切るあたりは歌舞伎を彷彿とさせます。
しなやかに自由に動く手足、リズミカルな足踏み、手先の優雅な動きに、観客は完全に魅入られていました。
舞踊家の素晴らしさを支えるのが音楽。動きの早い舞踊家たちの動作にピッタリとシンクロナイズされた演奏は見事というしかありません。さすが選抜された出演者たち、洗練された素晴らしい演技を見せてくれました。