ハチミツと花粉だんご

2015年5月



 

 

ファラオの墓の中から発見された太古のハチミツの成分が、今と全く変わっていなかったという驚異の報告があります。このことでも、ハチミツという物質の不変の不思議さと、古代から神聖なものとして尊ばれてきた事実が伺えます。今回はハチミツについての徹底研究です。これからは花粉の飛ぶ時期、花粉症にも効く花粉団子をお試し下さい。




ハチミツの歴史

ご存知のように、ハチミツとはみつ蜂が花の蜜から作る甘い物質です。みつ蜂はおよそ4~5千万年ほど前から既にこの地球上に存在していたと言われています。今から約4万年前、ハチミツの美味しさを発見した人間は、その甘さの虜になり、体中を蜂に刺されたり、高い木に登るなどの危険も省みず、野山や森へと蜂の巣を捜し求めて猟をしました。やがて人類は定住し、紀元前700年頃になると、ワラやアシで編んだ籠やくり抜いた木や粘土などで巣を作り「養蜂」が始まりました。

アジアではサトウキビが広く栽培されていましたが、西半球では何千年もの間、ハチミツが唯一の甘い物質でした。そのため蜂は神のように崇められ、ヒエログリフではファラオの象徴であり、古代ギリシャでは神の使者でした。その後もハチミツは知恵、雄弁、詩学といった知性の源と考えられていましたし、化粧品や万能薬としても高く評価されていました。ところが、大航海時代に新大陸からサトウキビによる砂糖作りが伝わり、さらに19世紀になり砂糖大根から砂糖が安く作られるようになると、ハチミツは甘味料としての希少価値を失ってしまいました。


みつ蜂

みつ蜂の社会構造は動物界の中でも大変珍しいものです。蜂の巣は、たった一匹の女王蜂と約90%の働き蜂(3000060000匹)、そして約10%の雄蜂(5002000匹)で構成され、各々のみつ蜂には決った仕事があります。女王蜂はひたすら卵を産み(最盛期で1分間に23個のスピードで一日に千個以上)群れを大きくすることに専念。雌でも卵を産まない働き蜂は、食料である花粉や蜜を集めて来るもの、ハチミツやローヤルゼリーを作るもの、女王蜂や幼虫の世話をするものと大活躍です。雄蜂は女王蜂と交尾すると同時に死んでしまいます。

ところで、みつ蜂が花の蜜を集めるという行動は自分達の群れを維持するためですが、同時に植物を受粉させ、植物種を保存するという自然界の中での重要な役割も担っています。


ハチミツの効用と特徴

成分は80%が糖分、残り20%が酵素、その他ビタミン、ミネラル、アミノ酸、プロテインなど180以上の物質から形成されています。糖分は単糖類のグルコースとフルクトースから構成され、これ以上消化される必要がないので体内での消化吸収が早く、腸にかかる負担が少ないので子供、お年寄り、病気の回復期にある人には最適です。また砂糖より20%もカロリーが低く、糖度は1.2倍もあり、食べて直ぐにエネルギー源となるので運動選手にも適し、更にカルシウム、鉄、カリウムなども含まれているので、毎朝スプーン1杯のハチミツが、集中力とバイタリティーの素になります。但し、ハチミツにはごく稀にボツリヌス中毒を起こすボツリヌス菌を含むことがあるので、消化器官が未発達である1歳未満の乳幼児に与えるのは勧められません(1歳以上の子供や大人には安全です)。

ハチミツは酸性で糖度が高いために微生物の成長が阻止され、密閉容器に入れ乾いた涼しい場所に置けばいつまでも保存できます。気温が低くなると白く固まりますが、これは主成分であるブドウ糖の結晶化で、品質や栄養は変わりません。固まったハチミツは、45℃以下の低温でゆっくり湯煎すると元に戻ります(60℃以上に熱すると、風味や成分が損なわれる)。電子レンジで加熱すると成分の一部が変化して味が変わるので避けた方が望ましいそうです。

 

ハチミツの種類

一種類の花の蜜を集めた単花ハチミツ(miel de nector, miel de floral)、いろいろな花の蜜が混ざった百花ハチミツ(miel mélage , miel toutes fleurs)、樹液を吸った虫が出した分泌液をみつ蜂が採取した、特有の成分を含んだ甘露ハチミツ(miel de miellat)があります。

また、同じ花でも、地理的、季節そして植物学的要因などで、花の蜜に違いがあります。これらがハチミツの質・色・味などを決定するので、例えばカナダのレンゲの花とフランスのそれとは同じではありません。ハチミツの色も白から様々な濃さの褐色、赤や金色などがありますが、色の濃いものほど風味が強いといえます。

 

花粉だんご

みつ蜂は花から花へと飛び回り花の蜜を集めますが、そのとき体に生えている細かい毛に花粉がついてしまいます。みつ蜂は付いた花粉を、花蜜で少し湿らせ団子状に丸め、後ろ足についている花かごに入れて巣に持ち帰ります(時には体重の半分ぐらいの団子を持ち帰るときもある)。これを花粉だんご(Pollen de fleurs)といいます。養蜂家は「花粉トラップ」という道具を使いだんごを採取します。これは巣箱の入り口に働き蜂がやっと通れる程度の穴をあけた薄い板を取り付け、ミツバチがその穴を潜り抜ける時に、花かごが引っかかって中のだんごが下の受け皿に落ちるような仕掛けになっているものです(でも全部は落ちないのでご安心を)。

こうして巣に持ち帰られた花粉だんごは、巣の中の働きバチにかみ砕かれ、巣房の底へと押し込まれます。そして、巣房がいっぱいになるくらいたまると、その上にはちみつを塗られて、蜂パンという保存食として蓄えられるのです。巣に戻ってくるミツバチをよく観察してみると、後ろ足に黄色い丸い「花粉だんご」が付いています。

これが今注目の健康食品です。ローヤルゼリーの素となる花粉はパーフェクトフードと呼ばれ、たんぱく質、アミノ酸、炭水化物、各種ビタミン(B・C・D・E、プロビタミンA)、ミネラルなどを含み、腸の働きを整え、肉体・精神疲労、肌の老化を抑えるなどの効力があります。毎朝、小さじ1杯~2杯をそのまま、又はヨーグルトなどに混ぜて食べれば1日の活力となります。また抗アレルギー作用があるといわれ、アメリカの研究では花粉症の改善に役だつとの発表もあったそうです。しかし、ミルクや果汁などの液体や熱い液体に溶かすと、なぜかその効果が薄れます。



ローヤルゼリー

育児係りの若い働き蜂が花粉団子を食べ、体内で消化、分解、合成し、下咽頭腺と大あご腺から乳白色のクリーム状の物質を分泌します。これがローヤルゼリー。女王蜂が生涯にわたって食べる食物で、その驚異的な生命力の源です。ちなみに、これを食べて育つ女王蜂の体重は働き蜂の2~3倍、寿命は40倍と言われています。ローヤルゼリーには三大栄養素のたんぱく質、糖質、脂質をはじめ、アミノ酸、各種ビタミン、ミネラルなどがバランスよく含まれています。しかしその驚くべきパワーの全てが解明されているわけではなく、今後は更なる発見があるかもしれないとの期待が寄せられています。


プロポリス

みつ蜂が植物の新芽や樹皮から採取した樹脂に花粉や自分の分泌物、蜜ろうを混ぜた物質です。みつ蜂はこれを巣の出入り口や隙間に塗りつけ、巣や自分達を外敵、バクテリアやウイルスなどの雑菌から守ります。プロポリスには血液をきれいにし、抗アレルギー作用、鎮痛作用、止血作用、消炎作用、免疫機能を高める等の効用があるので、天然の抗生物質といえます。呼吸器官、皮膚病など多くの問題改善の手助けをしてくれます。


みつ蜂は2万回~10万回も旅して1リットルの蜜を集めますが、取れるハチミツはわずか150gにすぎません。私達の健康を支えてくれるエキスともいえるハチミツや花粉団子。それはみつ蜂の献身的な働きの賜物、すなわち自然の恵みに他なりません。今その自然が世界中で危機に陥っています。スプーン一杯のハチミツを食べるとき、大切な自然を守るため、私達が日常生活の中で何が出来るか、改めて考えてみるべきですね。


ボナペティ31号より

本稿はLe Miel Annie Perrier-Robet editions du chene

及び下記のサイトを参考にさせて頂きました http://www.3838.com



ハチミツを使ったおいしいデザートの作り方

レア ヨーグルト


材料

プレーンヨーグルト 500g(水切り後は250g前後)

蜂蜜(アカシア)   50g

生クリーム      140g(100g+40g)

板ゼラチン         4g

レモンのしぼり汁   大さじ1




[下準備]

コーヒードリッパーにフィルターをセットしてヨーグルトを入れ、ラップをかけて冷蔵庫で半日水切りする。(出てきた水分は使わない)

ゼラチンを水に浸す。

[作り方]

ボールに生クリーム100gを入れ7~8分立てに泡立てる。

鍋に生クリーム40gと蜂蜜を入れ、よく混ぜながら火にかける。ゼラチンが溶けるくらいの温度になったら火からおろし、水に浸しておいたゼラチンを加えて溶けるまでよく混ぜる。

2に水切りしたヨーグルトとレモンのしぼり汁を加え泡だて器でよく混ぜる。

3に1の泡立てた生クリームを加えて泡だて器でよく混ぜたら、グラスやボールに流し込み冷蔵庫で2~3時間冷やし固める。

好みで、レモンの皮を薄切りにし蜂蜜と少量の水でさっと煮たものをトッピングし、蜂蜜をかける。