マレーシア:キャメロンハイランド 紅茶「BHO」
2015年9月
紅茶といえば、英国の「トワィニング」や「フォトナム&メイソン」、フランスの「フォーション」や「マリアージュ・フレール」といった老舗や、今注目のシンガポール発のTWGなどを思い浮かべるでしょう。でも、その殆どは、自国から遠く離れたインドやスリランカなどで栽培生産されている紅茶です。そんな中で、マレーシアの紅茶「ボー(BHO)」は茶葉栽培から生産、梱包まですべてを自家農園で行っています。その希少な生産量から、「幻のアジアンティー」と呼ばれています。
キャメロン・ハイランド
キャメロン高原はマレーシアの首都クアラルンプールから北へ約200km、マレー半島の中央にある標高1500~1800mの高地です。イギリス統治時代の1885年、イギリス人の国土調査官ウィリアム・キャメロンがジャングルの中に発見。彼の名をとってキャメロン・ハイランドと名付けられました。一年中温暖な気候なので、イギリス人のための避暑地として開発されました。1967年3月、当時のタイのシルク王として有名だったアメリカ人ジム・トンプソンが謎の失踪をした場所として、世界に知られるようになりました。近年では、退職後のロングステイ地として多くの日本人や欧米人が暮らしています。
ボーの紅茶
熱帯雨林気候のキャメロン高原は年平均気温が20℃前後で、夜に立ち込めた霧が朝の強い陽射しで晴れるという昼夜の温度差があり、日照時間が長く、膨大な降水量(年間2500㎜)があります。開発当初から野菜や果物、花などが栽培され、今では毎日マレーシア全土やシンガポールに出荷しています。
この気候風土が茶葉栽培に好条件であることから、1929年イギリスの若き実業家J.A.ラッセルは、この地に紅茶農園(BHO TEA PLANTATION)を創設しました。すでに紅茶の生産地だったインドやセイロンからの入植者を労働力として、密林を伐採して茶畑を開き農園を築きました。現在、キャメロン高原に3か所とセランゴール州に1か所の自家農園(総面積12000ヘクタール)があり、農園内には茶葉の加工施設と梱包工場を有しています。収穫から梱包までを一括で行うので、新鮮で高品質な紅茶ができるのです。年間紅茶生産量は僅か4000トン、それでもマレーシアの年間生産量の70%に当たります。
ボーティーは、美しい琥珀色で、すっきりと円やかでコクのある味わい深いものです。ポットやカップに入れてから時間がたっても、渋みも苦味、アクも出ません。種類も豊富で、フレーバー・ティーはすべて地元で採れる果物やハーブを使い、フレッシュで爽やかな味です。マレーシア王室御用達で、イギリス王室から高い評価を受けエリザベスⅡ世は「紅茶アートの傑作」と称賛されました。
ジャングルの中の農園: Sungai Palas Tea Garden
ジャングルの中の曲がりくねった一本道を登り進むと、突然、目の前に緩やかな一面緑色に染まる茶畑が広がります。キャメロン高原にある農園の一つSungai Palas Garden です。ここでは、茶畑の間の散策や、紅茶の発酵や焙煎の生産工場を見学することができます。ショップで買い物をし、ティールームのテラスで茶畑を眺望しながら飲む紅茶は爽やかで元気が湧いてきます。
優雅にハイティー
キャメロン・ハイランド・リゾートは、昔から欧米人が避暑を過ごしてきた由緒あるホテルです。ジム・トンプソン・ティー・ルームでは、本格的なハイティーを楽しめます。ボーの紅茶の美味しさはもちろんのこと、この地で採れる新鮮な果物や野菜を使ったケーキやサンドイッチは本場そのもの。アジアにいながら英国調の落ち着いた雰囲気の中で、ゆったりと午後のひと時を過ごせるでしょう。