Book of 2013年6月
2013年6月
「料理通信」は絶えず進化し続ける世界の食の最前線を追い、最新トレンドを発信するプロや美食愛好家の必読誌だ。編集長の君島佐和子さんは、その小柄な体に溢れんばかりの知識と経験、そして的確な洞察力をもつエネルギッシュな名編集長だ。今ほど世界的に外食産業にスポットが当たっている時はない。欧米でもほんの15年ぐらい前までは、外食はハレの日のものだった。それが今や玉石混合で解禁になった感がある。情報過多のなかで珠玉を見つけるのは難しい。本書は作り手の素顔を真摯に見てきた著者が語る、今後のレストランの「あり方」とそれを楽しむための「味わい方」の指南書だ。作る側はもちろん食べる側にも、ヒントを求めて次から次へとページをめくらせる一冊である。しめを決める「世界にこれだけ普及したすしは、削ぎ落とした日本文化の典型」の章。ご明察にうなりました。
朝日出版 定価987円(税込)
2013年6月
美食で知られるイタリア料理の起源は、ナポリ料理(特にカンパーニア州)といっても過言ではない。ギリシャやローマ、スペイン、フランス、アラブの影響を受けたその文化と同様、食生活には多くの民族の知恵が詰まっている。リモンチェッロ、ピザ、水牛のモッザレラなど、我々にも馴染みの素材の多くはナポリ産だ。著者は美食に関する全分野を得意とする新聞記者。テレビやラジオ出演、コンサルティング、料理コンテストの審査員と世界を駆け巡る。その彼が長年足で集めた、シンプルかつ極め付けにうまいマンマの料理45編を紹介。どれも今すぐ作りたくなるものばかりだ。さらにナポリ(イタリア)の歴史から産物、その気質までも言及した、一味違ったレシピ本といえる。
Edition Racine 24,95€ www.racine.be
2013年6月
世界的な健康志向をうけ、最近のフレンチは、野菜や香草の体内のデトックス(解毒)作用を重視する傾向だ。自らの野菜園や果樹園を持つシェフが多くなり、脱肉崇拝がうたわれて久しいなか、“野菜と果物を考えて!”のサブタイトルをつけたガイド本がゴー・ミヨから出版された。共著のフランク・フォルは「野菜シェフ」として、レストラン業界と一般人への野菜と果物の啓蒙運動をすすめて24年目になる。当ガイド本は野菜を重視するレストランの紹介のみでなく、シェフの野菜への哲学、レシピ、また野菜市や専門店の住所なども併記してある。ゴー・ミヨはグルメガイド本としてミシュランと比較されがちだが、常に時代のニーズをいち早く感知し、革新的なオピニオンリーダーとして独自の見解をもつことで知られている。