今回からベルギー王立料理学校で習った簡単な料理を紹介します。
牛肉のビール煮
Carbonnade de boeuf à la Flamande
2016年12月
材料 4人分 | |
牛肉(カルボナードという煮込み用の肉) |
1kg |
タマネギ |
4個 |
ビール(黒ビール系が望ましい) |
250cc |
フォン・ブラン(fond brun:茶色のだし) |
500cc |
ジンジャーブレッド(pain d’épices) |
4枚 |
フレンチマスタード |
大さじ2 |
バター |
大さじ2 |
サラダ油 |
大さじ2 |
小麦粉 |
30g |
ブーケガルニ(bouquet garni)、塩・コショー |
適宜 |
左から→ カルボナードの肉、ジンジャーブレッド1&2(スーパーで購買可)、パンデピス、ブーケガルニ
<下ごしらえをする>
① フォン・ブランを作っておく。料理学校では正式なフォンの作り方を習いましたが、ここでは省略。市販の瓶詰や缶詰で代用します。ベルギーではla croix やbizacなど。
② 肉は2~3センチ角に切り、タマネギは薄切りにしておく。
③ タイム、ローリエ、パセリの茎を束ねてブーケガルニを作る。手抜きは市販のブーケガルニのティーバッグで。
<カルボナードを煮込む>
① フライパンにバターと油(タマネギ用に少し残しておく)をとり、油脂を十分熱くしてから肉を炒める。まんべんなく焼き色がついたら、軽く塩・コショーをする。肉を取り出し、他によけておく。肉を取り出した後に残った余分な脂を捨て、底にこびりついたうまみを取り出すため、フォン・ブランまたは水少々を加え強火にかけ、木杓子でうまみをこそぎ出し、あとで④に加える。
★コツ:肉のうまみや肉汁を閉じ込めるため、強火で肉の表面を焼く。この時点では中まで火を通さない。
② ココットなどの底の厚い鍋に、残りのバターと油をとり、タマネギをきつね色に炒める。
③ タマネギに①でよけておいた肉を加え、小麦粉を振り込みよく混ぜ合わせる(粉っぽさをなくすため)。
★コツ:小麦粉はトロミをつけるため。
④ ③にビール、フォン・ブラン、①のうまみ、ブーケガルニを加え、フタをして弱火でコトコト約1時間煮込む。
④ ジンジャーブレッドにマスタードをぬり、マスタードを塗った面を下にしてシチューの上に載せ、肉が柔らかくなるまでフタをして更に煮る(焦げ付かないように時々まぜる)。
⑤ 肉が柔らかくなったらブーケガルニを除き、トロトロになっているパンの上下をよく混ぜ合わせる。必要なら、塩・コショウ、好みで砂糖を加えて仕上げる。付け合わせは、フリットや茹でたジャガイモ。
メモ:
牛肉のビール煮はベルギーや北フランスの家庭料理。昔は、野良仕事に行く前に大鍋に全ての材料を放り込んで行き、帰るころには煮えているといった具合だったので、一つの鍋でもできます。肉に焦げ目を付けてから、タマネギ、ビールなどを入れ煮込みます。気楽に試して自分の好きな味のカルボナードを作ってください。ベルギー人は甘めが好きです。
メモその2:
古代ローマ人はハチミツ入りの甘いお菓子が大好きで、スパイスを豊富に使ったパン・デピス(pain
d’épice=ジンジャーブレッド)やビスケットを作りました。神の恵みのハチミツを使ったパンは神への捧げ物であり、神を模った焼き菓子(ビスケット)は新年を祝うものでした。13世紀、ジンギスカンの騎兵隊はパン・デピスがエネルギー源でしたし、アラブ人もハチミツやエピス(スパイス)、セモリナ粉、胡桃、アーモンド、ピスタシュ、シナモン、サフランなどを使い優れた保存食を作りました。その後、ヨーロッパの修道院や僧院でパン・デピス作りが始まりました。小麦粉、胡桃、薬用のスパイス類を大量に貯蔵し独自の養蜂所を持っていた修道院は、長期保存が可能なパン・デピスを病人や旅行者用に作り、それが市場に出て商品化されたのです。このように東西文化の融合から生れたのがパン・デピス(ジンジャーブレッド)です。